産婦人科専門医が解説!多くの女性が悩むPMSの対処法とは?
今回は多くの女性が悩む月経前症候群「PMS」について、産婦人科専門医で医学博士、東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍の高橋怜奈医師にインタービューでお話を伺いました。
目次
■PMSとはどんな状態の事を指すのですか?
高橋医師:月経の3~10日前から始まる精神的または、身体的症状で、月経開始とともに症状が軽減、消失します。
■なぜPMSが起こるのですか?原因とは?
高橋医師:はっきりとした原因は分かっていませんが、女性ホルモンの変動で症状が出ると考えられています。
排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にはエストロゲンとプロゲステロンの分泌が増えますが、黄体期後半にエストロゲンとプロゲステロンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因だと考えられています。
また、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因ではなく、ストレスやミネラル不足などの影響でも症状が強く出るため、多くの要因から起こるといわれています。
■PMSは何歳から起こりますか?
高橋医師:排卵が始まると起こる事が多いので、生理が始まる10代前半でも起こります。
■PMSは病気なのでしょうか?
高橋医師:PMSは月経前症候群といいます。症状がひどく日常生活などに支障がある場合は、病気として治療をする事が可能です。症状が気になる方は病院へ行きましょう。このくらい平気かな、と思う程度でも治療をする事でPMSがなくなると、こんなに楽だったんだ!と思えると思います。
■PMSの治療方法はありますか?
高橋医師:排卵で女性ホルモンの変動が起こりで不調が出るため、排卵を抑制するピル、ホルモン療法や、排卵のコントロールはしませんが、漢方薬での治療があります。その他症状に対しての対症療法もします。
PMDD(月経前気分不快障害)といって精神症状が強い場合は精神科の治療が必要になることもあります。
他に認知行動療法があります。月経の日記をつけることがおすすめです。
日記をつけることで生理の何日前から変化があるか、身体や心の状態を把握することができ、症状と向き合い、ストレスを軽くすることが出来ます。
生理管理アプリもあるので活用するのもいいでしょう。例えばケアミー(高橋医師もアドバイザーの1人)。生理予定日管理機能はもちろんの事、生理の悩みを相談できる相談チャット機能や、生理周期に合わせて過ごし方のアドバイスもあります。
生理予定日を共有できる「ペアリング機能」もあるのでパートナーと共有したり、年頃の娘さんがいる親御さんも一緒に生理予定日を共有することができます。
TikTokをやっているのですが、若い視聴者からのコメントで「生理の事を親に相談しづらい」という声もあります。直接親に言うのは嫌だけどアプリを通しての共有なら年頃の娘さんでも抵抗を感じにくいのではないでしょうか。
また、ピル服用モードがあるのでピルを服用している方のは服用時間をお知らせしてくれる機能もあります。
妊娠の可能性の高い日も分かるので、妊活にも有効です。
■PMSになりやすい人、なりにくい人はいるのでしょうか?
高橋医師:一概には言えませんが生理がある女性の70%~80%にPMSがあると言われています。
ストレス感じやすい人、不安を抱やすい人は症状が強く出やすいですし、環境の変化などでも起こる事も多いです。
■PMSで気を付けることはありますか?
高橋医師:便秘やむくむことが増えるので、食物繊維を摂って塩分を控えめにするのがいいでしょう。
あとはミネラルを意識して摂る事。浮腫みにはカリウムなどのミネラルが有効です。
緑黄色野菜にはミネラルが多く含まれているので摂りやすいです。また喫煙、カフェインやアルコールはPMSを悪化するとも言われているので、もし心当たりがあるなら、摂取を控えた方がいいかもしれません。
■PMSの症状の人がいた場合、周りの人が気を付けることはありますか?
高橋医師:イライラしているときは、スルーしてあげるのもいいでしょう。大変そうだなと思ったら、ちょっとした心遣いとか家事を手伝うとかもいいですね。また、PMSの症状の人も「生理前でイライラするけどごめんね」など伝えておくのもいいですね。
それも言いづらい場合は生理管理アプリのペアリング機能がおすすめです。
■どうしたら快適に過ごせますか?
高橋医師:軽い運動や、ウォーキング、有酸素運動もいいですね。
PMSはストレスの影響を受けやすいので精神の疲れをとるヨガやピラティスもいいでしょう。
あとは喫煙やカフェイン、アルコールを控えることも大切です。ただ、嗜好品を控えるとストレスになってしまう人もいるので好きなことをするのが一番いいですね。
ストレスを感じやすい人はそれも自分の性質なんだなと受け入れてスケジュールを詰め込みすぎないとか、疲れていなくても休憩をとるとかするのもいいでしょう。
■PMSは防げますか?また特効薬はありますか?
高橋医師:改善にはピル、ホルモン療法、(漢方薬など)があります。血栓リスクが高いため、ピルは40歳以上は慎重投与、50歳以上は禁忌とされています。生理を繰り返すと排卵が増え、病気のリスクが高まりますが、ピルを服用することにより、PMSの改善、子宮内膜症の改善以外にも大腸がん、卵巣がん、(子宮体がん)のリスクを低下させる働きがあります。
■PMSと子宮内膜症との関連性はありますか?
高橋医師:別です。PMSと内膜症は関係はありません。子宮内膜症とは子宮内膜に類似した組織が子宮以外の部分にできる病気で、卵巣にできてしまうと、卵巣の中で生理が起きているような状態になります。すると古い血液が卵巣内にたまり、それがチョコレート色に見える事から卵巣チョコレート嚢胞と言われています。卵巣以外にも子宮内膜症ができる事があり、子宮と腸が癒着してしまう事もあります。すると性交痛や排便痛があったり、便秘、下痢を繰り返したりします。生理痛がある人は内膜症の可能性もあるので産婦人科を受診しましょう。予防にはピルやホルモン療法が有効です。
■生理休暇って必要ですか?
高橋医師:生理休暇は必要ですし、生理休暇を取れる環境はいい事です。
しかし、生理休暇を取る程、生理のトラブルを抱えている事自体は異常なので病院に行きましょう。
■生理前に甘いものが食べたくなるのはなぜですか?
高橋医師:排卵後から生理までにプロゲステロンの分泌が増え、その結果インスリンの利きが悪くなり、血糖値が急上昇しやすく、その後に急激に低下するためだと考えられています。
チョコのような甘いものを食べると一気に血糖値が上昇し、一気に血糖値が下がる為、また同じような甘いものが食べたくなります。血糖値の急激な上昇を抑えるのには低GI食品がいいでしょう。この時期は腸の動きも鈍くなるので
腸の動きを整えるヨーグルトに、低GIのアガベシロップをかけて食べるのもいいと思います。
■高橋怜奈先生からのメッセージ
生理前の不調はあって当たり前ではないので、パフォーマンスがさがるようであれば気軽に産婦人科に来てください。
若い方は親と一緒に来院でも、一人で来院でも大丈夫です。
病院によっては、15歳以下、中学生以下は親同伴でといわれる場合があるので事前に電話で確認してください。
次回
子宮頸がんについてお話いただきます。
■高橋怜奈先生について
産婦人科専門医、医学博士。
東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍。2016年6月にボクシングのプロテストに合格。
Twitter、YouTube、TikTokでも医療情報の発信を行っている。
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産婦人科医YouTuber高橋怜奈
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