産婦人科専門医が解説!辛い更年期を快適に過ごすための対処法とは?
40代に入ると、更年期による体の変化や、気持ちが沈みやすくなるなど、様々な変化が起こります。体や気持ちの変化に戸惑う方も少なくありません。今回は、更年期障害の対処法と更年期の過ごし方について産婦人科専門医で医学博士、東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍の高橋怜奈医師にインタービューでお話を伺いました。
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目次
■更年期とはどんな状態のことですか?
閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。
(日本産科婦人科学会ホームページより)
■どういった症状があった場合、受診が必要ですか?
更年期の症状で一番多いのが、ホットフラッシュですが、症状があっても、それほど困っていなければ、様子を見ていても問題ありません。少しの症状でも、気になる、治したいという場合は、受診してほしいです。色々な症状が出ていて、本当に更年期によるものなのかとか、また甲状腺の病気(甲状腺機能低下症など)でも更年期に似た症状が出る場合もあったり重大な病気が見つかることもあるので、更年期だから当たり前と決めつけずに気になるようであれば受診してほしいです。
■更年期症状と同様の症状が出る病気はありますか?
卵巣癌などは早期発見が難しく、体重低下、倦怠感などがあり、更年期の症状だと思って放置していたけれども、実は卵巣癌だったということが多々あります。検診をしていない状態で、更年期のような症状があった場合、更年期だと思い込んでしまうと、とても危険です。更年期症状が出始める40代は、卵巣がんや、甲状腺の病気になりやすい時期なので、医師の診断がなく、自分で判断してしまうと、重大な病気を早期に発見することが出来ない場合があります。
■更年期と他の病気はどうやって判断しますか?
更年期による症状なのか、甲状腺の病気なのか、うつなのか、それとも他の病気なのかを判断する為には、血液検査や必要に応じて診察が必要になります。症状が酷くなってからではなく、少しでも気になる事があれば受診してほしいです。卵巣癌、子宮体癌には定期検診がなく、1年に1度子宮頸癌の検診をしているからといって早期発見できるものではありません。子宮頸癌検診の時に超音波検査を追加すると、卵巣や、子宮内膜といって子宮体癌ができる部位を確認できますが、毎年超音波検査をチェックしていてもわからないことがあります。子宮体がんの検査は、子宮の奥に器具を挿入して検査する為、痛みを伴い、また感染をおこしてしまう場合もあるため、不正出血や超音波検査で子宮内膜の異常がみられなければ、ルーティンでの検診は不要です。卵巣癌や子宮体癌と違い子宮頸癌は、早期発見・早期治療が出来る為、症状がなくても20歳以上で性行為の経験のある方は2年に1回は子宮頸癌検診を受けましょう。
■婦人科を受診するタイミングはいつが望ましいですか?
2年に1度は子宮頸癌の検診を受け、そのタイミングで、超音波検査もしておくと安心です。子宮筋腫、子宮内膜症と医師に言われた事がある場合は、半年に1度や1年に1度程度の間隔で受診しましょう。状態によっても検査間隔はかわるので、担当医に相談しましょう。不正出血がある、おりものがいつもと違う、腹痛があるなど、いつもと違う場合は、検診のタイミング以外でも早期に受診しましょう。
■更年期でも妊娠しますか?
妊娠する可能性は低いですが、妊娠する可能性もあります。症状が出ていなくても閉経を挟んだ10年間を更年期と言います。閉経の前後5年間の更年期では、女性ホルモンが減少し、排卵が不規則になるので妊娠をする確率は低いですが、排卵のタイミングで性交渉をすると妊娠する場合があります。完全に閉経(1年以上、生理がない状態)していない場合、妊娠を望んでいなければ、避妊をしましょう。
■更年期は恥ずかしいことですか?
誰もが通る事なので恥ずかしいことではありません。更年期症状が出る、出ないは、個人差があるので、症状があるから恥ずかしい、症状がないからおかしいなどという事もありません。
■更年期を防ぐことはできますか?
更年期という期間(閉経の前後5年間)は誰にでもありますが、低用量ピルを服用している期間は、更年期症状が和らぎます。ピルを服用している場合、50歳まで(もしくは50歳以下で閉経する場合はそれまで)服用することが出来ます。服用をやめると更年期症状が出る事があります。その場合は、ホルモン補充療法(HRT)をすると改善することが多いです。女性ホルモンは、骨の維持にも関係するため、ホルモン補充療法(HRT)は骨粗しょう症の予防としても効果があります。更年期症状の治療は、症状が酷くならないと、治療が出来ないということはなく、症状が軽くてもホルモン補充療法(HRT)で治療が出来ます。ホルモン治療だけでなく、漢方薬もよく使用します。漢方薬は婦人科でも処方が可能です。そのほか対症療法を行ったり、場合によっては精神科や心療内科を紹介することもあります。
■妊娠経験の有無と更年期が来る時期は関係がありますか?
関係ありません。閉経とは卵巣の活動性が消失し、月経が永久に停止した状態です。閉経時には、生まれたときに100~200万個あった卵は1000個近くになっているといわれています。卵巣の中の卵は胎児期に最大数あり、その後は増えることなく、減少していきます。排卵時に消費される卵は1つですが、排卵をしなくても毎月1000個ほどの卵が消滅します。ピルを服用すると排卵を抑えることはできますが、せいぜい月に1個の排卵を抑制するだけで、卵の消滅を抑えることはできません。ですからピルを服用しても閉経までの期間が延びる訳ではありません。ただし、ピルを服用して排卵を止めることは、卵巣の壁をきれいに保ち、卵巣機能の温存に貢献しますし、不妊症の原因となる子宮内膜症の発症リスクを抑えるため、ピルの服用は様々なメリットがあるのは事実です。
■初潮が来る年齢によって閉経までの期間に差はありますか?
初潮が早い人は、閉経が早い、初潮が遅い人は閉経が遅いなどという事はありません。初潮は体脂肪の影響を受ける為、ある程度体脂肪がないと初潮が発来しません。
■更年期症状が出る人と出ない人の差はありますか?
更年期症状が出る、出ないは、個人差が大きく、またその人が置かれている環境からの影響もあります。更年期の40代、50代は、子育て、家事、親の介護などのストレスが多い世代です。ストレスがかかることで、より強く症状が出ることがあります。
■更年期のセックスで気をつける事はありますか?
若いときは、肌の保水力が高く、外陰部や膣に水分が保たれていますが加齢によりエストロゲンの分泌が低下すると、膣や外陰部の柔軟性が失われます。そのため、性交時の摩擦で外陰部や膣の痛みを感じやすくなります。痛みを感じる場合は、潤滑ジェルを使ったりホルモン補充療法(HRT)での治療が有効です。更年期だといっても妊娠の可能性はあるので、妊娠を望まない場合は、避妊をしましょう。
■先生からのひとこと
更年期は誰もが通る道です。症状がある場合は、産婦人科の治療で改善されることがあります。更年期以外の病気が見つかる事もあるので、気になる場合は、気軽に産婦人科を受診してください。
■高橋怜奈先生について
産婦人科専門医、医学博士。
東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍。2016年6月にボクシングのプロテストに合格。
Twitter、YouTube、TikTokでも医療情報の発信を行っている。
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産婦人科医YouTuber高橋怜奈
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